「アイスタイル」はわからなくても、「アットコスメ」なら知っている人も多いはず。
東証プライム上場企業と聞けば聞こえはよいですが、たくさんの困難を乗り越え今に至っているようです。
創業25年を迎えるアイスタイルの創業者である吉松哲郎氏が語る、アイスタイルの歴史や経営の苦労、成長の秘訣などを綴った一冊が、この『アットコスメのつぶれない話』に詰まっていました。
経営者視点のお話ですが、サラリーマンの私にも刺さる部分が多く、読んでいて勉強になった点や面白かった点をまとめてみました。
感情的な高揚感と現実的なお財布事情の天秤
商品を購入するとき、人は色々なことを想像しながら物を購入します。
より便利になった自分の生活を想像したり、自分の自己肯定感があがったり、単純にわくわくする。
そのような未来をイメージしながら商品を購入することが多いでしょう。
しかしながら、商品を購入するにはその対価が必要です。
今月ちょっと厳しい、だけどこれが欲しい。
そんな感情と現実の狭間に揺れながらも感情が勝ったとき、人は商品を購入します。
化粧品のケースでも例にもれず、化粧品を買う人たちは口紅一本買うだけでも「きれいになりたい」という感情的な高揚感と現実的なお財布事情を天秤にかけて化粧品を購入しています。
そんな人々が頼りにする情報の一つである、実際に商品を使用した人のクチコミや評価が集まり、さらにそのクチコミや評価が「信頼できる情報」として存在するのが「アットコスメ」というサービスです。
実際のユーザーの行動や心理を正しく把握することは、ビジネスを成功させるためには欠かせない要素です。
しかし、サービス提供する側は目の前の課題に追われ、そのことを見失いがちです。
この本から、次から次へと発生する様々な課題に直面しながらも、自分が初めに掲げた信念、ミッション、ビジョンの大切さを学ぶことができます。
経営者だけでなく、サラリーマンであっても、この視点を持つことができれば、自分の仕事に対する姿勢が変わるかもしれません。
自分が働いている会社のミッションやビジョン、自分自身のミッションやビジョンは何かを改めて考えてみると、今までとは違った視点で物事を見ることができるかもしれません。
「辞めない」「逃げない」という信頼感があるからこそ、本気でぶつかり合うことができる
私はIT業界で働いているのですが、IT業界では特にメンタルに支障をきたす人が多い業界に思います。
その中で人との接し方は、とても重要な要素となってきます。
私自身、その人との関係値にもよりますが、ビジネスマナーとしての人との接し方だけでなく、その人との関係値やその人の仕事量の負荷状況やメンタル状況を加味して伝え方を変える必要があるなと感じています。
また、オブラートに包んだ言葉をさらにオブラートに包んだ結果、何も伝わってないという失敗も経験したことがあります。
こういった気遣いは、たい人に対して当たり前のことである反面、あまりに度が過ぎるとビジネスとして実現したいことが実現できなくなったり、スピードが遅くなったりすることがあるとも思っています。
自分の信念を叶えたいと思ったときには、余計な気遣いをせず、思ったことをそのまま伝えられる仲間がいるかどうかで、その信念を叶えることができるかどうかが変わってくるのかもしれません。
また、そういった関係値を築いていくことも、重要な要素であり身に着けるべきスキルの一つだと感じました。
世にも不思議な体験は、人の記憶に強烈に残る
本書の1章節をまるまる使って、窮地を救ったエンジェル投資家の話が書かれています。
結果としては、そのエンジェル投資家が1億円投資した。と一言で書くこともできるのですが、筆者の吉松氏はそのエンジェル投資家に投資をしてもらうまでにとても不思議な体験をしておりその様子が詳細に書かれています。
この話がとても珍妙で面白く、学びの多いはずの本書の中で一番記憶に残っている章となりました。
そして、このエピソードは一生擦れるエピソードだなと思いました。
このような体験をするには、ある一定の運も必要でしょう。
しかし、その運を引き寄せるためには、自分自身が一生懸命に行動することが重要であると感じました。
必至にこうどうしているからこそ、運を引き寄せることができる。話が面白い人になりたい。と思っている人は小手先のテクニックよりも自分自身で行動することこそが大切なのかなと感じる章でした。
運のからくりについては、こちらの記事にもまとめていますのでよかったらご覧ください。
まとめます
このブログに、経営自伝的な本をまとめるのは初めてですが、やはり経営者の経験やどうやって壁を乗り越えたかなどの話を読むのはとても面白く、学びになることが多かったです。
経営者だけでなく、サラリーマンであっても積極的にこのような本を読むことで、いつもの仕事の視座が上がる気がしています。
気が向いたら過去に読んだ経営自伝も読み返してみてまたまとめてみようと思います。
それではまた!
作者
吉松哲郎
株式会社アイスタイル
代表取締役会長 CEO
1972年、茨城県生まれ
東京理科大基礎工学部卒業後、アンダーセン・コンサルティング(玄アクセンチュア)に入社。1999年7月にアイスタイルを設立し、代表取締社長に就任。同年12月、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」をオープン。
「@cosme」は日本最大のコスメ・美容の総合サイトへと成長し、現在は化粧品専門店「@cosme STORE」の運営やEC事業を始めとしたビジネスを展開する。2012年に東証一部上場。2022年8月には代表取締役会長就任。
公益社団法人経済同友会の幹事を務めるほか、公益財団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団を設立し理事長として現代アートの政策・展示への助成支援を行う。
「第6回ニュービジネスプランコンテスト」優秀賞(1999年)、ICS「第14回 ポーター賞」(2014年)、「EY Entrepreneur Of The Year Japan 2018」Exceptional Growth部門特別賞(2018年)など受賞歴多数。