本音ときどき嘘建前

エンジニアの自己啓発と読書メモのブログ

『新版・一流の頭脳 運動脳』アンデシュ・ハンセン

運動するモチベーションが欲しかった

前回読んだ、読書脳で紹介されていた珠玉の31冊に選ばれていた本で、本屋を巡ったときにたまたま目に入った。

私は定期的にジムに通っているが、どうしてもサボりがちで、本当は週に2回通おうと思っているが1回しか通えなかったり、ひたすらやらない理由を考えてしまい、ジムに行くまでにうだうだしたりし時間を無駄にしてしまっている。

そういったときに、私のような堕落した人間は、とにかく行動に移すということができるわけがなく、何か運動をするモチベーションを求めてしまう。

目次をチラ見すると、科学的な観点で色々書かれてそうではないですか。

一時期、背中に鬼を宿す親子が喧嘩する漫画を読んだときに、脳内物質のドーパミン・エンドルフィンに注目したことがあるが、結局詳しいことまでは調べることがなかった。

これを機に、科学的な観点から色々書いてある本を一冊読んでみよう。ということでこの本を手に取った。

あと、「運動脳」「熟睡者」「食欲人」のシリーズが並んでて、ジャケットみてシリーズでまとめ買いしてしまったことは、まだ誰も知らない。

印象に残った項目

脳内の領域の連携が強いか弱いか

脳にはプラスの特質とマイナスの特質があるらしい

  • プラスの特質
    • 記憶力が優れている
    • 集中力がある
    • 教育水準が高い
    • 飲酒や喫煙に対する自制心が強い
  • マイナスの特質
    • カッとなりやすい
    • 過剰な喫煙
    • アルコールや薬物への依存

プラスの特質を備えていると、脳の各領域がしっかりと連携していて、マイナスの特質を持つ人は脳内の連携が良くない傾向にあるようだ。

これらの特質は、生活習慣によってプラス・マイナス軸上のどちらに脳が属するかが決まる。

頭の良さやIQは生まれ持った資質の部分が大きいと思いがちだが、生活習慣で決まるのだ。

私は現状確実のマイナス軸に属している自覚があるわけだが、一度マイナス軸に属してしまった場合はもうプラスに戻ることはできないのだろうか?

そうではない。脳は柔軟に変化していくのだ。

事例として、脳が半分しかない女性の例や脳に損傷を受けて生まれた天才少年の例が上がっており、後天的に脳の機能や役割が変化していった事例が紹介されている。

では、何をすれば、脳によい変化を与えるか?答えは簡単。運動をすればよいのだ。

先述したが、私は確実にマイナス軸の属している。

仕事をしながらアイコスを吸い。仕事がリモートになってからは確実に喫煙量が増えた。

さらに本を読む、自己研鑽する。ということがなかなかできず、気が付けば手軽に楽しい動画サブスクやゲームをしてしまい、なかなか本当に自分のためにやるべきことを実行に移すことができない。

しかしながら、カッとすることは滅多にないし、飲酒もたまに友人と飲みに行くくらいで一人で飲むことはほとんどない。

もしかすると、マイナスの特性といえど、部分的にはプラスの特性だったりと脳の領域によってプラス・マイナスの軸が異なるということもあるのかもしれないなと思った。

運動をすることでストレス耐性が増えていく

ストレスには、コルチゾールというストレスホルモンが影響している。

ストレスが発生する構造としては、私たちの体に備わっているHPA軸というメカニズムによって、何かしらの刺激を受けると、コルチゾールが分泌され、コルチゾール血中濃度が上がることで、動機が激しくなったりすることで、ストレスを感じるという仕組みだ。

さらにそのストレス反応によって、刺激を受け、さらなるストレスが生み出されるということもわかっている。

ドラゴンボールの悟空は息子の悟飯と精神と時の部屋に入ったときに、ずっとスーパーサイヤ人でいることで、スーパーサイヤ人になったときのそわそわ感をなくし、スーパーサイヤ人でいることがごくごく当たり前な状態にまでもっていった。

この事象のストレス版を運動によって実現できるというのだ。

通常のメカニズムとしては、

1.運動をして、肉体に負担をかける
2.コルチゾールが増える
3.運動が終わる
4.元の値に戻っていく

しかし、例えばランニングを定期的に続けていくと、2で分泌されるコルチゾールの量が増えにくくなり、さらには4で運動後に下がる量は逆に増えていく。

つまり、運動によるストレスを感じにくくなっているわけだが、それだけではなく、運動以外のことが原因のストレスを抱えている時でもコルチゾールの分泌量がわずかしか上がらなくなるというのだ。

この状態って、スーパーサイヤ人でいることをごくごく自然な状態とする修行にも似ているし、死の淵に立たされて復活すると戦闘力が大幅に上昇する現象とも似ている。

つまり、私たちは少なからず、サイヤ人の血を引いていると言っても過言ではないのかもしれない。

報酬系のシステムを利用して集中力を取り戻す

報酬系は私たちが何かしらの行動を起こすための原動力となる強力なシステムだ。

報酬系に欠かせない物質が、「ドーパミン」だ。

おいしいものを食べたり、社会的交流、運動や性行為のような、生物として生存確率を上げ、遺伝子を残すことにつながる行動がドーパミン分泌につながる。

で、このドーパミンだが、運動によっても分泌量を上げることができるというのだ。

なぜ、運動するとドーパミンが分泌されるのかというと、私たちの祖先は、狩猟や住処を探すときに走っていたためこれが生き延びるための行動であるのでは?と考えられている。

これって、現代人の脳の仕組みは、超昔からあんまり変わってないってことになるが、それはそれで単純でわかりやすい。

脳の構造が変に進化してて、複雑な条件下でないとドーパミンが分泌されない。ってなるよりかは全然ましなわけだ。

原始人でよかったー!

報酬系の働きにも個人差がある

生存確率をあげる状況下において分泌されるドーパミンだが、人によって放出される閾値はことなるようだ。

閾値が高い人は、報酬中枢を活発に働かせるのに、より大きな刺激が必要になる。

そのため、すぐに気持ちが高揚するものを求め、時間がかかるものには目を向けたがらず、「長期的な目標を立てて辛抱強く取り組むことが苦手で、大小さまざまなものに目移りしがちになる」という傾向がみられるようだ。

私は、長期的な目標に向かってこつこつ頑張るってことが自分は本当に苦手で、様々な本を読んだり、習慣化を試したりしてきた。

しかし、成果がでるのに時間がかかることも理解しているため、今この瞬間頑張ることがどうしてもできないので、まさに閾値が上がってしまった人間なのだ!とこれを読んでいて雷が落ちたような衝撃を受けた。

また、ドーパミンは集中力にも関係しており、例えばカフェにいて本を読んでいるときに周りの雑音が聞こえにくくなる事象を経験したことがある人は多いと思う。これもドーパミンが関係している。

こういった事象から、人にとってドーパミンとは単なる報酬の脳内物質であるだけでなく、集中力を保つためには絶対に欠かせない重要な役割を果たす物質でもあるということがわかる。

報酬系の働きをいい感じにコントロールすることで、ドーパミンを上手に分泌して、自分の人生もいい感じにコントロールできそうな予感がしてきた。

しかし、ここで一つ疑問が残る。

ドーパミンが分泌されることで集中力が増すことは分かったが、ドーパミンを増やすことって可能なのか?

これは科学的に解明されている。

答えは簡単

ドーパミンを増やすためには体を動かせばよい」

脳内最強格の物質を用いてモチベーションを取り戻す

脳内最強格の物質として、BDNFが紹介されている。

BDNFは、主に大脳皮質や海馬で合成されるたんぱく質で、

脳細胞がほかの物質によって傷ついたり死んだりしないように保護する

  • 新たに生まれた細胞を助け、初期段階にある細胞の生存や成長を促す
  • 脳の細胞間のつながりを強化し学習や記憶の力を高める
  • 脳の可塑性を促して細胞の老化を遅らせる
  • 脳細胞の新生をも促す

といった、様々な働きをしてくれる物質のらしい。

BDNFを増やすための方法は、言わずもがな「運動をすること」。

基本的に人間の脳細胞はどんどん死滅していくのだが、新しく作られもしている。

うつ病になると、新しい細胞が作られなくなり減る一方のため、意欲の低下が引き起こされる。

つまり、脳細胞がきちんと増え続けていれば、意欲の低下は引き起こしにくくなるとも言えるのではないか?

運動をすることでBDNFが増え、脳細胞が増えていき、意欲の低下を抑制する。といった構図である。

自家製のモルヒネ

みなさんは、モルヒネという物質をご存じか?

シャーマンキングでファーストが全身にモルヒネを打っており、痛みを感じないといっていたあれだ。

鎮痛剤として絶大的な効果を誇るモルヒネだが、これは脳細胞の表面に受容体があり、モルヒネと受容体が結合することで効果を発揮する。つまり受容体がなければ鎮痛作用などは起こらないわけだ。

ここから素晴らしい人体の不思議に触れていく。

モルヒネはケシの実から生産される薬物、アヘンから抽出されたものだ。

では、なぜ人体に自然界から取れるモルヒネを取り込む受容体があるのか?

これは、脳が自家製のモルヒネを合成することができることを示唆している。

この自家製モルヒネは、「体内性モルヒネ」、略して「エンドルフィン」だ。

エンドルフィンきたー!

ランナーズハイという事象を聞いたことがあると思う。

これは実在するもので、ランナーが全力で走った2時間後にエンドルフィンのレベルを測定するとランナー全員のエンドルフィンのレベルが走った後に増えていた。という調査結果があるというのだ。

つまり、走ることでエンドルフィンは分泌されるというわけだ。

ランナーズハイに関しては、

  • 少なくとも45分は走らないと起こらない
  • 頻繁に走れば走るほどランナーズハイになる可能性が高まる
  • エンドルフィンが放出される量も、運動量が増えるほど増加し、ランナーズハイになりやすくなる

ということが分かっている。

エンドルフィンを分泌して、高揚感を得ることで意欲的に物事に取り組めるようになるわけだ。

普段の運動においては、ランナーズハイまで行かなくてもプチ・ランナーズハイ状態で十分に恩恵にあずかれる。というプランニングが提案されている。

まとめ

運動脳では、紹介したものの他にも

  • 記憶力を上げる
  • アイディアをひらめく
  • 学力を高める
  • 健康になる

などについても、運動が解決してくれるということが書いてある。

結論としては、

  • コンディションを最高に保つなら、週に3回45分以上のランニング
  • 脳への影響を考えると、筋トレより有酸素運動のほうが望ましい

という形で、一般人が何をすればいいの?という部分を提示して終わっている。

つまり、筋肉もすべてを解決してくれるので、有酸素運動もするし、筋トレもすれば今後の人生はすべてうまくいくんじゃね?というのが、今回の私の結論。

とっても興味のあった、ドーパミン・エンドルフィンについて、科学的な観点から解説してくれている本だったので、とても楽しく興味をもって読むことができた一冊だった。

作者

アンデシュ・ハンセン

精神科医スウェーデンストックホルム出身。

カロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)にて医学を、ストックホルム商科大学にて企業経営を納めた。現在は、上級医師として病院に勤務するかたわら、多数の記事の執筆を行っている。

これまでに、「ダーゲンス・インドゥストリ」(スウェーデンの経済新聞)、「SvD」(スウェーデンを代表する朝刊紙の1つ)、「レーカレ・ディードニング」(スウェーデンの医療関係者向けの雑誌)、「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」などに医学研修や医薬品に関する記事を2000件以上寄稿。ラジオやテレビでも情報を発信し、特にテレビ番組「科学の世界」への出演で有名。自身のテレビ番組もスウェーデン国内で持っている。講演活動も積極的に行っている。

精神科医として活動するかたわら、テニス、サッカー、ランニングに励み、週に5日、少なくとも1回45分取り組むようにしている。

主な著書に「スマホ脳」(新潮社)などがある。