「\かつてなく/最高の主人公」らしい
本屋に行くといつも店の一番目立つところに飾られていた。 本の帯には、「\かつてなく/最高の主人公、現る」の文字。 なんか流行ってるっぽいものは知っておいたほうがよさそうだし、文字数自体もそんなに多くないので読むのにもそこまで時間はかからないだろう。ということで、読んでみることにした。
だんだんと成瀬あかりのファンになっていく
物語は、西武大津店がもう少しで閉店するところからはじまる。 閉店するのが西武だったり、時代背景にコロナがあったりでやたらリアルだなと思ったら、確かに2020年8月31日まで、西武大津店は実在していて、たしかにそこには「ありがとう西武大津店」と口にしたたくさんの人達がいたようだ。 さて、そんな実話が元になっているこの物語だが、成瀬あかりが夏休み毎日西武大津店に通うところから始まる。 第一章の途中までは、「なんだかパットしない主人公だな」感が正直強かった。 なぜなら、かつてない最高の主人公を求めて本を買っているんだから。 しかし、成瀬あかりは私の「最高の主人公像」とはまったく別の角度から攻め込んできて、それでいて心を掴んだら話すことはなかった。 完全に成瀬あかりのファンになってしまった。
成瀬を心の支えである島崎みゆきの存在
この本を語るうえで、欠かせないのが島崎みゆきの存在だ。 島崎みゆきは、成瀬あかりの親友であり、生粋のファンでもある。 成瀬あかりは、常に自身に満ち溢れ、迷いなく自分が目指す目標を定める。 しかし、彼女ももちろん完璧ではないし、不安もあれば迷いもある。 そうすると、なぜか隣にいる島崎みゆきがいい味を出してくる。 一見、常に成瀬が先陣を切り、島崎を引っ張っているように見える二人の関係性だが、実はそうではない。島崎みゆきも心のなかに強いものを持っていて、成瀬も島崎のことを信頼している。お互いに言いたいことは何でも言える中であるからこそ、支え合って困難を乗り越えながらも前に進んでいく。そういった二人の間柄が心地よく、物語を読み進めることができる。
まとめ
200ページちょっとで、文字数もそこまで多くない本なので、半日とかで読み切れてしまう本だが、素敵だな。あったかいな。自分もなにか挑戦しよう。と思わせてくれる本だった。 さくっと読める本だけど、成瀬あかりの圧倒的主人公感をひしひしと感じ、本屋の人がおすすめしたくなる気持ちもわかるなと思った。 実は、続編も購入済み、読了済みなので、後日まとめることとする。
作者
宮島未奈
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2018年「ニ位の君」で第196回コバルト短編小説新人賞を受賞(宮島ムー名義)。2021年「ありがとう西武大津店」第20回「女による女のためのR-18文学賞」対象、読者賞、友近賞をトリプル受賞。同作を含む本書がデビュー作。