自分ができること・できないことが分かってきた諦めの30代
私は本を読むのが遅い。なので、1冊数十分で読める。という技術はとても魅力的で、読書に関する本といえば、速読の本ばかり読んできた。
時には速読のためのトレーニングをしたり、いろんな読み方を試してみたりしたものの、なかなか頭に残らない。そのうち、早く読むことが目的になってしまい、読んだ内容を頭に残すこと、本に書いてあった内容を実践することがおろそかになってしまった。
30代になって、世知辛い世の中を知り、社会の荒波に揉まれ、自分にできることとできないことの区別がついてきて、本をものすごいスピードで読み、且つ、内容を頭にばっちり残す。というのは難しいということを理解した。諦めの境地。大人になるということは色々な物事を諦めるということだ。夢や希望を諦めるたびにまた一つ大人の階段を登ることができるのだ。そんなわけで、爆速で本を読み切ることは諦め、また一つ大人になった私は、如何に読んだ内容を頭に残すのか?本を読んだ結果、何を得たのかに重点を置くようになった。このブログもその一環である。
読書脳。素晴らしいタイトルだと思った。だって、脳。今自分がやろうとしていることを実現できそうなタイトルだ。
本を読んだ内容を忘れないための技術を身に着けることで、本を読むのに使った時間のより多くを自分の成長につなげられそうだ!
そんなことを考えながらこの本を手に取った。
印象に残った項目
本書では、読んだ本の内容をどれだけ自分のものにしていくか。の方法論に加え、読書がどれだけ人生を豊かにするかについてとても多くのページを使って書かれている。
読書で脳が成長する。ストレスも軽減される。お金も成功も手に入る。何より読書は楽しい。すべてを解決するのは筋肉だと思っていたが、どうやら読書でも人生の大半の課題を解決できるようだ。
そんな中で面白かった項目をいくつかピックアップしていく。
読書術とは時間術
読んだ本の内容を忘れない方法については、2章の冒頭に書かれている。
- 読んだ本について、1週間に3回アウトプットする
- 読んだ時のわくわく感や怖いなどの感情にともなう脳内物質を利用して、記憶に残す
- 人に説明できるくらいの精度で本を読む
という概要となっている。
これだけをみると、本をきちんと読みこむ必要があるし、プラスでアウトプットする時間を必要になるため、ガンガン本を読み進めていくスタイルと比べて、本を読む絶対量自体は少なくなるような印象がある。
しかし、そうではない。そうではないのだ。
読書術とは、言ってしまえば時間術なのだ。
普段スマホをいじっているちょっとした時間、電車に乗っている時間などの活用し、そもそもの本を読む量を増やすこともできるし、「今日一日でこの本を読みきる。」という目標をたてると、時間的なリミットがかかるので、より集中して本を読むことができ、より記憶にも残りやすい。というわけだ。
結局、自分で頑張る方向の解決方法なのかい!
なんかすんごい裏技的なあれで、一発で記憶に残るとかじゃないのかい!
と、思う人もいるだろう。
しかし、私は知っている。
とある方法を試すだけで、超人的な能力が手に入ったり、簡単に退勤が転がり込んできたりするようなことは、ほとんどない。
だいたいが地道な努力の結果手に入るもので、それらを手に入れる方法はただ一つ、目標に向かって行動することである。
そういった意味では、スマホいじるとか無意味なことをせずに本を読め!そしたら本を読み切ることができる。と言っているこの本の主張は非常に本質的だと言える。
複数冊にわたる読書の方法について
3章以降は、2章で紹介された方法を実践していくための具体的なアプローチ方法について書かれているが、細かい読書法については、巷で結構言われている内容が多かった印象。
ただ、5章の読む本をどのように選択するかついてが個人的に面白かったので印象に残っている。
- 読んだ本の内容をより深めたいなら、その本の出典元を次に読んでみる
- Amazonなどで、この本を買った人はこんな本も読んでいます。をたどってみる
- わくわくしている時に読む本が一番記憶に残りやすいので、別ジャンルでもその時読みたいと思った本を読む
など、何を読むべきかの選定基準について書かれている。
私の職業はエンジニアなので、技術の本などは同じジャンルの本を買ってまとめて読むことで、そのタイミングで一定以上の技術知識を身に着けることをしたり、面白い小説に出会ったときはその作者の本をまとめて読むことはあるが、自己啓発系の本についてはあまり一つのジャンルを深堀することはやってこなかった。
なんだかんだ、面白そうな本がいっぱいあって、その時読みたいなと思った本をジャンル問わず読んでいく。そんな本の選び方が多い。
そんな私であるが、今までにこの手法でまとめて本を読んだことが2回ある。
そのジャンルは、「貯蓄や投資に関する本」と「読書術系の本」だ。
これらをまとめて読んだときは、本ごとに好き勝手なこといってんなーという内容やどの本でも同じことを言ってるなーという内容が頭に入ってきやすかった。
これらの分別ができるようになると、実践する内容としては、
どの本でも述べられていること→実践する
本ごとに異なる主張→自分にあったものを必要に応じて実践する
という棲み分けができ、自分なりのオリジナリティあふれる方法で実践することができる。
この方法を試した結果、読書系、特に速読関連の内容については頑張ってみたものの身につかず全敗だったが、貯蓄や投資については、自分がやるべきことをそのタイミングで確立し、その運用は数年たった今も安定して続いている。
せっかく時間を使って読んだ本の知識をどこまで消化させていくかどうかは、次にどんな本を読むかによって変わってくるのだ。
[回想]私の人生で一番本を読んだ時期
小説をたくさん読むなら読書友達を作ること
私が最も本を読んだなと言える時期が大きく2回あった。
1回目は、小学校高学年〜中学卒業まで
2回目は、社会人4年目〜6年目まで
この本を読んで、自分が一番本を読んでた時期っていつだっけなーと振り返ってみたところ、この2回が一番本を読んだ時期だった。
もちろん、それぞれの時期でやっていたことの違いはある。
高校時代は、野球部の練習に明け暮れ、大学時代は、不真面目ゲーム大好き大学生だったし、社会人になってはじめのうちは、プログラミングや技術に関する本を読むことが多く、読書というより、技術のお勉強のほうがメインだったりした。
もちろん、これらの時期に全く読書をしていなかったかというとそんなことはなく、どんなに読んでなくても年に1冊は本を読んでいたと思う。
1冊ってとても少ないように思えるが、人生で大切な色々なものをおろそかにしても熱中できるものがある中でも本を少しずつでも読み続けていた。ということは、やはり読書が割と好きな方なのかなと思う。
さて、この2回の時期には共通する部分があることに気がついた。
それは、「読書友人がいた」ことだ。
1度目は、たまたま読んでいたローワンシリーズを読んでいたクラスメイトがいて、盛り上がった結果ローワンシリーズ以外の本もお互いに教え合うようになり、本を貸し借りするようになった。
また、その頃はハリー・ポッターシリーズが出だした時期で、長編の物語系の本を沢山読んだ。
2度目は、芦沢央の「火のないところに煙は」が面白すぎて、会社の同僚におすすめした結果、お互いに芦沢央にハマり、発売している本を片っ端から買い集め、湊かなえ、恩田陸など、お互い気になった作家の本を集め、おすすめし合うことでひたすら読書をする。という日々を送っていた。
どちらも、同じ趣味の友人がいて、本を読むのが面白いし、いい本をおすすめしたいし、おすすめされた本を早く読みたい。という気持ちがあり、読書に没頭していた気がする。
自己啓発系をたくさん読むなら尊敬している本を聞いてみること
2回目の本を沢山読んだ時期には、小説だけではなく、自己啓発系の本もたくさん読んだ。
とはいっても、1日1冊読み切れるようなスピードで本を読むことはできないので、月2,3冊くらいではあるが。
自己啓発系の本はもともと好きで、数ヶ月に1冊くらいは読んでいたのだが、そのときは会社で各プロジェクトのチームリーダーたち(社歴10年くらい)が集められ、取締役が自ら研修を行う社内大学みたいな取り組みがなされていた。
この取り組みの中で、必ず課題図書というのが出されていて、取締役が今まで読んできた中で良かったものや、難しい本であればその入門編の本などがリストに挙げられていた。
私はその時まだ、4年目、5年目くらいの時期だったのでそのメンバーに選ばれることはなかったのだが、メンバーの中にとてもお世話になっている先輩がいたのと、社内大学の講師をしていた取締役が、少し前にカリスマ的雰囲気を醸し出しながら新しく就任したばかりの取締役だったため、私はこの社内大学の内容に興味津々だった。
その興味津々の一環として、課題図書のリストに乗っている本はすべて読んでみて、会社で偉くなる人がおすすめする本、社会人10年目の先輩が勉強するために読む本を若手のうちに先取りしてしまおう。みたいな若気のいたりムーブをかましていた。
今、kindleを見返してみると、
など、なんとなーく有名どころや有名どころに向かうための入門書的な本が並んでいた。
私は当時、課題図書として読み切って満足してしまっていたが、本当に身につけようと思ったら、これらのジャンルについて、他の本をまとめて読んでいっていればより深い知識が身についたんだろうなと今になってみれば思うし、取締役もそういったムーブを期待していたに違いない。
振り返ってみると、この頃から、読みたい本が読み切れなくなってきて、本を早く読むための速読沼にハマっていった時期でもあった。
まとめ
読書関連の書籍は、読書術にのみフォーカスされることが多く、この本に書いてあることも重複するような内容が多かったが、著者の樺沢さんは、「アウトプット大全」などアウトプットについての本も書いていることもあり、どうすれば読書がより自分の成長につながるか?にフォーカスしている部分が読み応えのある本だった。
また、こういったアウトプットや自己成長に魔法みたいな方法はなく、着実に行動を積み重ねていくしかない。といったニュアンスできちんと書かれているのも好印象で、その中で如何に楽しんだうえで、自分の血肉にしていくかを考えるきっかけとなる本だった。
作者
樺沢紫苑(かばさわ しおん)
精神科医、作家。1965年札幌生まれ。札幌医科大学医学部卒。2004年から米国シカゴのイリノイ大学精神科に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンとし、YouTube(46万人)、メールマガジン(12万人)など累計100万ふぉろわーに情報発信をしている。著書45冊、累計発行部数230万部のベストセラー作家。シリーズ累計90万部の「アウトプット大全」(サンクチュアリ出版)をはじめ、「神・時間術」(大和書房)、「ストレスフリー超大全」(ダイアモンド社)、「言語化の魔力」(幻冬舎)など話題書多数。読書については本書が唯一の書籍である。